2D-NMRの読み方 ― HMBC の相関が「無い」ことは、結合が無いことの証拠にならない【2026年版】
COSY・HSQC・HMBC・NOESY は同じ「相関」という言葉を使うが、返している物理量はまったく違う。HSQC が信頼できるのは 1J(CH) が 120〜250 Hz と桁違いに大きく、しかも狭く固まっているからで、HMBC が信頼できないのは nJ(CH) が 10 Hz 以下に散らばっているからである。HMBC の交差ピーク強度は |sin(π·J·Δ2)| に従うので、遅延 Δ2 を 65 ms から 100 ms に変えるだけで、10 Hz の相関は強度 0.89 から 0.00 へ完全に消え、15 Hz の相関は 0.08 から 1.00 へ現れる。二面角が 90° に近ければ 3 結合でも消え、4 結合や 5 結合の相関はごく普通に現れる。そして 2J と 3J は 0〜8 Hz で範囲が重なるため、出てきた相関が何結合かも HMBC 単独では決まらない。「相関が無いから結合が無い」という推論が、どれだけ構造を間違えてきたかを原典で追う。