ICP-OES のカタログは、たいてい二つの数字で語られる。分光器の分解能と元素別の検出下限である。どちらも光学系の性能を表す数字だ。
ところが実務でデータの質を左右するのは、その光がつくられる手前にある。
同心型ネブライザの霧化効率は、約 2% である。
吸い上げた試料の 98% はスプレーチャンバーの壁に当たって排液になり、プラズマには届かない。しかも、この 2% という数字は装置の欠陥ではなく設計そのものだ。大きな液滴を通してしまえばプラズマ中で蒸発しきれず、かえって精度が落ちる。捨てることで精度を買っている。
そしてここに厄介なトレードオフがある。詰まりにくいネブライザに替えると、液滴が大きくなる。液滴が大きくなると、マトリックス効果が増え、プラズマの頑健さそのものが落ちる。分解が甘くて粒子が残っている試料ほど、詰まりにくい型を選びたくなる ―― そしてそれは、いちばんマトリックス効果に弱い状態を自分でつくることになる。
本記事は、この「プラズマに届く前」の話から始めて、プラズマの頑健さを数値で測る方法(Mermet の Mg II / Mg I 比)を軸に、観測方向・分光器・干渉補正までを順に掘る。最後に、「干渉は補正すればよい」という思い込みを具体的な数字で崩す。
この記事の読み方
- 入門者:1〜3 節と 7 節。ICP-OES が何をしている装置なのか。
- メソッド開発をする人:4〜6 節が本題。プラズマの頑健さと観測方向。
- 干渉に悩んでいる人:8〜10 節。分光干渉の類型、補正の代償、内標準の限界。
- 装置を選ぶ人:7 節と 12 節。分解能という数字の読み方。
どの手法を選ぶかという上位の判断は 元素分析法の全体像 で扱った。本記事は ICP-OES を選んだあとの話である。
1. 性能を決めているのは、光学系ではなく試料導入系
ICP-OES は四つの部分でできている。試料導入系 → プラズマ(発光部)→ 分光器 → 検出器。カタログが語るのは後半二つだが、前半二つで失われたものは後半では取り戻せない。
日本薬局方の一般試験法〈2.63〉が定義する物理干渉は、まさにこの前半で起きる。
試料溶液と検量線用標準溶液の粘性,密度,表面張力などの物理的性状が異なる場合,発光部への試料溶液の噴霧効率に差異が生じることから,測定結果がその影響を受けることをいう.
粘性・密度・表面張力。これらはすべて液体が霧になるときの性質である。分光器の分解能をいくら上げても、霧になる段階で標準溶液と試料溶液が違う振る舞いをしていれば、結果は狂う。
だから ICP-OES のメソッド開発は、まず試料導入系を決め、次にプラズマ条件を決め、最後に波長を選ぶという順序になる。
2. ネブライザ ― 感度と「詰まらないこと」は両立しない

ネブライザは試料溶液を霧に変える部品である。ICP 用消耗品の主要メーカーである Glass Expansion は、選択基準を四つ挙げている ―― 霧化効率、純度、そして HF・粒子・全溶解固形分(TDS)への耐性。
そして、設計による違いを明確に述べている。
The cross-flow and V-groove nebulizer designs typically produce an aerosol that has larger droplets with a wider droplet size distribution. Larger droplets can pass through the plasma without desolvating or completely evaporating, resulting in poor precision, reduced nebulization efficiency, increased matrix effects and reduced plasma robustness, whereas concentric nebulizer designs produce a smaller, more uniform droplet size, providing higher transport efficiency (sensitivity) and improved precision (RSD).
要点を訳して並べる。
- クロスフロー型と V 溝型は、液滴が大きく、サイズ分布も広い。大きな液滴は脱溶媒も完全な蒸発もされないままプラズマを通過する。結果として、精度の低下・霧化効率の低下・マトリックス効果の増大・プラズマのロバストネスの低下が起きる。
- 同心型は液滴が小さく均一で、輸送効率(=感度)と精度(RSD)が良い。
ではなぜ同心型一択にならないのか。同じ文書が答えている。
The trade-off with nebulization efficiency is that the cross-flow and V-groove designs will provide greater tolerance to particulates. Incomplete sample digestion can result in remaining particulates; these particulates can block the smaller capillary and gas annulus of a concentric nebulizer.
分解が不完全で粒子が残っていると、同心型の細いキャピラリと環状ガス流路が詰まる。
ここに、実務で最も引っかかる論理の輪がある。分解が甘い試料 → 詰まりにくいネブライザを選ぶ → 液滴が大きくなる → マトリックス効果が増えプラズマの頑健さが落ちる → 分解の甘さが結果に効きやすくなる。前処理を手抜きした代償が、ネブライザ選択を通して二重に効いてくる。
実際の製品で見る
Glass Expansion の三つの不活性ネブライザは、この構図をそのまま製品化している。
| 製品 | 型式・材質 | 位置づけ | 吸引量 |
|---|---|---|---|
| DuraMist | 同心型・PEEK | 高精度分析で最も経済的。同心型としては最高の TDS 耐性。キャピラリ挿入部を交換できる | ― |
| OpalMist | 同心型・超高純度 PFA | HF・アルカリ・有機溶媒への耐性が最良。高純度 PFA ゆえ元素バックグラウンドが最も低く、超微量 ICP-MS 向き | 0.05 / 0.1 / 0.2 / 0.4 / 0.6 / 2.0 mL/分 |
| VeeSpray | V 溝型・99.8% アルミナセラミック | 大きな粒子への耐性が最大。「実質的に詰まらない」。非同心型なのでペリスタポンプが必須 | 0.6〜3 mL/分(最適は 1.5〜2.5) |
同社は「ガラス製・石英製のネブライザは、ケイ素など一部の元素の超微量 ICP-MS 定量には適さない」とも述べている。ネブライザ自身の材質が、測りたい元素のバックグラウンドになる。
塩に対する耐性
分光装置メーカー SPECTRO は、自社の ARCOS ICP-OES で複数のネブライザを比較した結果を公開している。試験マトリクスは純水・10% NaCl 水溶液・灯油・50% イソプロパノール。
| ネブライザ | 特徴 | 塩への耐性 |
|---|---|---|
| クロスフロー型 | 試料とガスの流路が直交。汎用的で堅牢、高マトリックス対応 | ― |
| Seaspray(同心型・ホウケイ酸ガラス) | 高感度・低 RSD・自吸引 | 塩濃度 3% まで。アルゴン加湿器併用で 20% まで |
| V 溝型(大口径キャピラリ) | 未溶解粒子・スラリー可、詰まりにくい。非 HF 用途 | 塩分 30% まで |
| Mira Mist(PTFE・拡張パラレルパス) | 広い化学的適合性、大口径で詰まりにくい | ― |
同社の結論は、Seaspray と Mira Mist が多くのマトリックスで感度に優れ、クロスフロー型はバランス型、そして灯油や高塩といった複雑なマトリックスでの安定性はクロスフロー型と Mira Mist が高いというものだった。
なお Teledyne Labs(CETAC)は、Hildebrand グリッド型ネブライザがアルゴン加湿器なしで 30% NaCl を吸引できるとしている。
用語補足:アルゴン加湿器は、ネブライザに入るアルゴンをあらかじめ水蒸気で飽和させる装置。高塩試料でネブライザ先端に塩が析出して詰まるのを防ぐ。
3. スプレーチャンバーが捨てているもの
ネブライザが作った霧は、そのままプラズマへ行くわけではない。スプレーチャンバーを通る。ここが「捨てる」装置である。
Teledyne Labs は同心型ネブライザについて端的にこう書いている。
Its efficiency is approximately 2%.
約 2%。残りの 98% は、大きすぎる液滴としてチャンバーの壁に当たり、排液口から捨てられる。
なぜ捨てるのか。2 節で見たとおり、大きな液滴はプラズマ中で蒸発しきれないからである。蒸発しきれない液滴は、発光しないだけでなく、プラズマから熱を奪ってその場の温度を下げ、周囲の元素の励起状態まで乱す。一粒の大きな液滴が、その瞬間の測定全体を狂わせる。だから通さない。
スプレーチャンバーには主に二つの型がある。
- スコット型(二重管型):安定性と堅牢性に優れる。クロスフロー型ネブライザと組み合わせるのが一般的。
- サイクロン型:洗い出しが速い。多様なネブライザと組み合わせて広く使われる。
洗い出し(ウォッシュアウト)の速さは、そのままメモリー効果の少なさと分析時間に効く。高濃度試料の次に低濃度試料を測るとき、前の試料が残っていれば結果は上振れする。サイクロン型が主流になったのはこの理由が大きい。
実務の判断:試料導入系は「ネブライザ単体」ではなく「ネブライザ+スプレーチャンバー+ポンプチューブ」の組合せで決まる。HORIBA は、ペリスタポンプの速度について「低すぎれば試料量が足りず感度が下がり、高すぎればエアロゾル生成がノイジーになってやはり感度が下がる」とし、ネブライザとポンプチューブの組合せごとに最適化しなければならないとしている。カタログの検出下限は、この組合せが最適化された状態の値である。
4. プラズマの頑健さを数値で測る ― Mg II / Mg I 比

ここからがメソッド開発の核心である。
プラズマの「頑健さ(ロバストネス)」は、数値で測れる。
HORIBA の定義を引く。
Robustness is the ability of the ICP-OES to provide accurate results even with variations of the composition of the sample. A robust ICP-OES is an instrument able to minimize matrix effects.
試料の組成が変わっても正確な結果を出せる能力。頑健な装置とは、マトリックス効果を最小化できる装置である。
そして測り方は、驚くほど単純だ。
It has been shown in the literature (J.M. Mermet, Anal. Chim. Acta, 250, 85 (1991)) that the robustness can be checked using the ratio of an ionic to an atomic Mg lines (Mg II 280.270 nm / Mg I 285.213 nm). This is what is called the Mg ratio, often written Mg II / Mg I. The higher the Mg ratio is, the more robust the instrument is.
マグネシウムのイオン線(Mg II 280.270 nm)と原子線(Mg I 285.213 nm)の強度比を取る。この比が高いほど、プラズマは頑健である。
なぜマグネシウムなのか、なぜイオン線と原子線の比なのか
原理はこうである。プラズマに入った原子は、まず励起され、さらにエネルギーを受け取るとイオン化する。プラズマがよく効いていれば、イオンになっている割合が高くなる。逆に、プラズマにエネルギー的な余裕がなければ、原子のまま留まる割合が増える。
したがって イオン線 / 原子線の強度比は、プラズマが試料にどれだけエネルギーを渡せているかの指標になる。マグネシウムが選ばれたのは、イオン線と原子線が波長的に近く(280 nm と 285 nm)、同じ検出器・同じ光学系で比べやすいからである。5 nm しか離れていなければ、分光器の応答の波長依存性もほとんど効かない。
そして、これが実務上決定的な意味を持つ。エネルギーに余裕のあるプラズマは、試料の組成が多少変わっても振る舞いが変わらない。余裕がないプラズマは、共存する塩やマトリックスが少し増えただけで、励起状態の分布が変わってしまう。Mg 比は「余裕」の測定なのである。
HORIBA は、塩化ナトリウム 10 g/L を加えたときのマトリックス効果を、頑健な条件と頑健でない条件で比較した図を掲げている。同じ装置でも、条件次第でマトリックス効果の大きさが変わる。
注記:Mg 比の「いくつ以上なら頑健か」という閾値については、文献で複数の値が流通している。本記事では閾値の数値を原典で確認できていないため、具体的な数字を挙げない。確かなのは「比が高いほど頑健である」という方向と、Mermet の 1991 年の論文がこの指標の出典であることの二点である。実務では、自分の装置で水系標準を測ったときの値を基準として記録し、条件を変えたときの相対的な増減を見るのが現実的である。
5. 頑健さを上げる操作は、感度を上げる操作と逆を向く

では、どうすれば Mg 比が上がるのか。HORIBA の答えは明快である。
Robust conditions can be obtained using high power settings and low nebulization flow rate.
高い高周波出力と、低い霧化ガス流量。
この二つが何をしているかを考えると、理由がわかる。
- 高出力:プラズマに投入するエネルギーそのものを増やす。余裕が増える。
- 低い霧化ガス流量:エアロゾルをプラズマの中でゆっくり通す。滞留時間が延びるので、同じエネルギーでもより完全に脱溶媒・原子化・励起される。
ところが、ここに実務上のジレンマがある。霧化ガス流量を下げると、プラズマに運ばれる試料の量も減る。つまり感度は落ちる。
頑健さと感度は、霧化ガス流量というひとつのつまみの両端にある。メソッド開発でこのつまみを「感度が最大になる位置」に置くと、マトリックス効果に最も弱い状態になる。標準溶液だけで検量線を引いている限りそれは見えず、実試料を入れた瞬間に回収率が崩れる。
日本薬局方〈2.63〉が定める操作条件の範囲は、この調整の幅を示している ―― 高周波出力 0.8〜1.4 kW、キャリヤーガス 0.5〜2 L/分。この範囲のどこに置くかが、そのままメソッドの性格を決める。
そのほかのガス
HORIBA はプラズマガスと補助ガスについても具体的な指針を出している。
- プラズマガス:水溶液で典型的に 12 L/分。高塩濃度・有機溶媒・揮発性溶媒・高出力設定のときは増やす。流量が低すぎると信号が不安定になったり、マトリックス効果が増える
- 補助ガス:主に高塩・有機マトリックスで、プラズマとトーチ内管の接触を避けるために使う。こうしたマトリックスではプラズマの直前にイオン化領域ができ、それが内管に接触しうる
補助ガスは検出下限にほとんど効かないので軽視されがちだが、トーチを守るための流量である。有機溶媒や高塩試料でトーチ内管に炭素や塩が析出するなら、まず補助ガスを疑うのが筋道になる。
なお HORIBA は、高周波出力の感度への影響は、霧化ガスやシースガスの流量ほど大きくないとも述べている。出力は感度のつまみではなく、頑健さのつまみだと考えるほうが実態に合う。
6. 軸方向観測は本当に有利か ― 自己吸収とマトリックス効果

ICP-OES にはプラズマを見る向きが二通りある。軸方向(アキシャル)はプラズマを筒の正面から覗き込み、横方向(ラジアル)は真横から見る。
一般には「軸方向のほうが感度が良い」とされる。PerkinElmer は、軸方向観測は横方向観測より検出下限を最大 10 倍改善するとしている(元素分析法の全体像 6 節)。光路が長くなり、プラズマ自身の連続バックグラウンドが減るためである。
ところが HORIBA の説明を読むと、話はそう単純ではない。
(1) 自己吸収が起きる
Self-absorption effect with axial viewing (red curve) and linear response with radial viewing (black line) for the same concentration range.
軸方向では自己吸収が起きる。プラズマの中心部で発光した光が、外側の低温領域にある同じ元素の原子に吸収されてしまう現象である。光路が長いほど起きやすいので、軸方向は原理的に自己吸収に弱い。結果として、同じ濃度域でも横方向は直線応答を保つのに、軸方向は曲がる。感度と引き換えに直線範囲を失っている。
(2) マトリックス効果を強く受ける
radial view is known to provide reduced matrix effects where axial view is highly affected by these effects
横方向はマトリックス効果が小さく、軸方向は強く影響される。理由は自己吸収と同じで、軸方向は光路上のすべての領域 ―― 高温の中心部も、低温の外周部も ―― を通して見ているからである。マトリックスが変われば外周部の状態が変わり、それが直接測定値に乗る。
(3) 検出下限の優位は、試料が簡単なときに限られる
Radial viewing shows detection limits really close to axial detection limits for water, and better when the sample is more difficult.
水なら軸方向とほぼ同等、難しい試料ではむしろ横方向のほうが良い。
(4) 高 TDS で堆積する
軸方向の装置は高い全溶解固形分で堆積の問題を抱え、単純なマトリックスに限られるか、試料の希釈を強いられる。
二社の主張をどう読むか
PerkinElmer は「軸方向は 10 倍良い」と言い、HORIBA は「水なら同等、難しい試料では横方向が良い」と言う。どちらも嘘ではない。前者は希薄水溶液での検出下限を、後者は実マトリックスでの実効性能を語っている。元素分析法の全体像 5 節で見た「カタログの検出下限は理想条件の IDL である」という話が、ここでも同じ形で現れている。
現行機の多くが両方向を1回の分析で切り替えられるデュアルビューを備えているのは、この事情による。高濃度の主成分は横方向で、微量成分は軸方向で、という使い分けができる。
実務の判断:軸方向が有利なのは「希薄で、マトリックスが単純で、上限側を測らない」場合。この三条件のどれかが崩れているなら、横方向を試す価値がある。特に、検量線の上限側が寝てくる(直線からずれる)現象が出たら、まず自己吸収を疑い、横方向に切り替えて同じ検量線を引き直してみる。
7. 分光器の三方式と、分解能という数字

プラズマからの光を波長ごとに分ける部分である。HORIBA の解説によれば、実用されている配置は三つある。
| 方式 | 回折格子 | 特徴 |
|---|---|---|
| ツェルニー・ターナー型 | 高密度、典型 2400〜4320 本/mm | 2枚のコリメート鏡と回折格子(またはタレット上の複数格子)。格子を回して全波長をカバーできる。スペクトル全域で分解能が一定。160〜800 nm |
| パッシェン・ルンゲ型 | 高密度、典型 2400〜4343 本/mm | 凹面回折格子で分散し、ローランド円上に固定した複数の検出器で同時測定。幾何的制約から全波長カバーはできないが、分解能は一定 |
| エシェル型 | 低密度、典型 50〜100 本/mm | 光をエシェログラムという二次元図形に分散させる。重なり合う次数を分離する仕組みが別途必要 |
原理として押さえるべきは一点である。
The better the groove density is, the better the resolution is.
溝密度が高いほど分解能は良い。ただし、その代償としてカバーできるスペクトル範囲が狭くなる。エシェル型が 50〜100 本/mm という低密度格子を使いながら高分解能を実現できるのは、高い次数(order)を使うからである。次数を上げれば分散は大きくなるが、次数が上がるほど光の強度は落ちるため、実用されるのは主に 1 次と 2 次である。
HORIBA は自社機で焦点距離 1 m の光学系を採用し、検出下限を犠牲にせずに分解能と光の透過を両立させているとしている。焦点距離が長いほど分散は大きくなるが、装置は大きくなり、光量は減る。
分解能の数字の読み方
分解能は pm(ピコメートル、10⁻¹² m) で表される。Analytik Jena の PlasmaQuant 9200 シリーズを例に取ると、標準版が 200 nm で 6 pm、上位の Elite が 200 nm で 2 pm である。
必ず「どの波長で」がセットになっている点に注意したい。分解能は波長依存性を持つので、波長を書かない分解能の数字は比較できない。特に短波長側(180〜220 nm)は、砒素・鉛・カドミウムといった規制対象元素の主要分析線が集中する激戦区であり、そこでの分解能が実効性能を決める。
検出器と直線範囲
HORIBA は、検出器の選択が動的直線範囲を大きく左右すると述べている。
- 動的直線範囲は装置によって 3 桁から 10 桁まで幅がある
- 光電子増倍管(PMT)は広い直線範囲を実現でき、典型 8 桁、HORIBA の HDD では最大 10 桁
- 固体検出器(CCD/CID)は画素の電子容量に限りがあるため直線範囲が狭い
固体検出器は多元素同時測定という決定的な利点を持つが、上限側の直線性では PMT に劣る。主成分と微量成分を同時に測りたい場面で、この差が効いてくる。
8. 分光干渉の四類型

Thermo Fisher Scientific は、ICP-OES の干渉をまず三つに分ける。
- 化学干渉:試料と検量線標準がプラズマ中で異なる反応(イオン化)をすることによる。イオン化緩衝剤の添加で容易に克服できる
- 物理干渉:粘性・密度・マトリックスの違いが試料輸送や霧化に影響する。内標準化で補正できる
- 分光干渉:干渉元素による分析線の部分的または直接の重なり
そして「分光干渉が最も厄介である」とする。
Spectral interferences can cause the most issues for users, as they are sometimes hard to identify, especially when there is a direct spectral overlap.
分光干渉は、標準物質メーカー Inorganic Ventures の整理によれば四つの型に分かれる。
(1) 直接(線)重なり
an interfering line sits directly on the analyte line and cannot be resolved by the spectrometer
代表例が As 228.812 nm が Cd 228.802 nm に重なるケースである。波長差はわずか 0.010 nm = 10 pm。前節で見た分解能の数字を思い出せば、これが「装置の分解能より小さい差」であることがわかる。
Thermo は、この状態でスペクトルに現れる兆候を書いている ―― ピークがわずかに非対称になるか、軽い「肩」が出る。ピークが二つに割れて見えるなら、それは分離できている。分離できていないときほど、見た目は正常なのである。
(2) ウイング(裾)重なり ― 分析線が、近傍にある強い発光線の裾(スロープ)に乗ってしまう。
(3) バックグラウンドシフト
a broad change in continuum background, often from a high-concentration matrix element, that raises or tilts the baseline
高濃度のマトリックス元素が連続バックグラウンドを広く持ち上げたり、傾けたりする。
(4) 迷光 ― 強い発光が光学系内で散乱して、別の波長位置に紛れ込む。
バックグラウンド補正の使い分け
Inorganic Ventures はバックグラウンドの形ごとに補正法を指定している。
| バックグラウンドの形 | 補正法 | 注意 |
|---|---|---|
| 平坦 | ピークの両側で補正 | 近傍にピークがなければ、補正点をピークからどれだけ離すかは重要でない |
| 傾斜(直線的) | ピーク中心から等距離の両側で直線補正 | 等距離であることが精度の条件 |
| 曲線 | 放物線(parabolic)アルゴリズム | 「装置によっては難しい。よりきれいな分析線を選んで避けよ」 |
最後の一行が実務の要諦である。補正で解決するより、干渉のない波長を選ぶほうが常に良い。
9. 干渉補正は無料ではない ― 検出下限が約100倍悪化する

分光干渉が避けられないとき、元素間補正(IEC: Inter-Element Correction)が使われる。干渉元素の濃度を別途測り、その濃度に比例した分を分析線の信号から差し引く方法である。
一見、完璧な解決策に見える。だが代償がある。
Inorganic Ventures は、100 ppm のヒ素が共存する溶液中でカドミウムを Cd 228.802 nm で測るという具体例で、その代償を数字にしている。
| Cd 濃度 | As / Cd 比 | 未補正の誤差 | 最良の補正後 |
|---|---|---|---|
| 0.1 ppm | 1000 : 1 | 5100 % | 51.0 % |
| 1 ppm | 100 : 1 | 541 % | 5.5 % |
| 10 ppm | 10 : 1 | 54 % | 1.1 % |
| 100 ppm | 1 : 1 | 6 % | 1.0 % |
未補正では、0.1 ppm のカドミウムが 5.2 ppm に見える。補正してもなお 51% ずれる。補正が実用的な精度(数パーセント)に収まるのは、カドミウムが 1 ppm 以上ある場合だけである。
そして最も重要な帰結がこれである。
the detection limit increases roughly a 100-fold loss from 0.004 ppm to ~0.1–0.5 ppm for Cd, with the lower quantitation limit rising from 0.04 ppm to somewhere between 1 and more realistically 5 ppm Cd.
補正を適用した瞬間、カドミウムの検出下限は 0.004 ppm から 0.1〜0.5 ppm へ、約 100 倍悪化する。定量下限は 0.04 ppm から、現実的には 5 ppm まで上がる。
理由は単純で、補正とは大きな数から大きな数を引く操作だからである。引き算の結果は小さくても、両方の項が持っていた不確かさは残る。ヒ素の測定値が 1% ばらつけば、そのばらつきがそのままカドミウムの値に乗る。
さらに IEC には前提がある。
the approach assumes slight changes in the instrumental operating parameters and conditions will influence both the analyte (Cd) and the interfering element (As) equally
装置条件のわずかな変化が、分析種と干渉元素に等しく影響するという仮定である。Inorganic Ventures はこれを「多くの分析者が受け入れない仮定」だと書き添えている。
実務の判断:IEC は「使ってはいけない」ものではないが、適用した時点で検出下限を申告し直さなければならない。補正前のカタログ値をそのままメソッドの検出下限として書くのは誤りである。そして 元素分析法の全体像 3 節の逆算に立ち返れば、補正によって 100 倍悪化した検出下限で規制値を測れるのかという問いが必ず生じる。多くの場合、答えは「測れない」であり、そのときの正しい対応は補正の改良ではなく ICP-MS への移行である。
干渉がないことを、どう示すか
Thermo は、規制メソッドがこの点をどう扱っているかを書いている。
It is normally a requirement of many regulated methods, such as US EPA methods 200.7 or 6010D, to demonstrate that any analysis carried out is free from spectral interferences, typically by running a series of interference check solutions. These solutions contain high concentrations of well-documented interfering elements for key contaminants. When analyzed, these solutions must return a result of close to zero for the analytes of interest.
干渉チェック溶液を測り、分析種の結果がゼロに近くなければ干渉があると判定する。「干渉はないはずだ」ではなく、「干渉がないことを実測で示す」のが規制メソッドの作法である。
なお現行機の分解能は相当に上がっており、Thermo は自社の iCAP PRO シリーズで Pd 340.458 nm が隣接する Co 340.512 nm と完全に分離し、さらに隣の次数にある Co 347.402 nm・Cu 333.785 nm・Cu 327.396 nm とも分離できることを示している。装置を新しくすることが、干渉問題の最も直接的な解決になる場合がある。
10. 内標準が直せるものと、直せないもの

物理干渉への標準的な対処が内標準法である。Thermo の実務ガイドが、その範囲を明確に線引きしている。
内標準とは何か ―― ブランク・検量線標準・QC 試料・未知試料のすべてに一定濃度で添加し、分析種と同時に測定する元素。プラズマ中で分析種と似た振る舞いをするので、試料輸送・励起・検出のあいだに起きた変動を映す。
選択の条件
- 試料中に存在しないか、無視できる量しかないこと
- 分析種と分光干渉を起こさないこと
- その発光線自身も干渉を受けないこと
- マトリックスと相性が良いこと
- 分析種と似た励起・イオン化特性を持つこと
濃度 ―― 実務ではネブライザの位置で約 1〜5 ppm になるように導入する。
補正できるもの
- ポンプの不安定さやネブライザの変動による試料輸送の変化
- プラズマの不安定さと光学系のドリフト
- 粘性や表面張力の変化がエアロゾル生成と励起効率に及ぼす影響
補正できないもの(ここが重要)
They do not resolve spectral overlaps or interferences. They cannot compensate for incorrect calibration or non-linear response behavior. Detector saturation and fundamental method errors also remain unaffected.
分光干渉は直せない。誤った検量線も、非線形応答も、検出器の飽和も、方法自体の欠陥も直せない。
Thermo はこう締めくくっている ―― 「内標準はよく設計された方法を強化するが、欠陥のある方法を救うことはできない」。
導入の二方式
- 事前スパイク方式:すべての溶液に測定前に添加する。全溶液で濃度を揃える調製の手間がかかる
- オンライン添加方式:Y 字コネクタで内標準溶液を各試料に連続的に混合しながら導入する
到達できる精度 ―― 貴金属定量では、個々の測定値にばらつきがあっても、内標準によるドリフト補正をブラケッティング法と組み合わせることで、12 回測定で総合精度 0.07% という例が示されている。
日本薬局方〈2.63〉が内標準元素の条件として「ICP発光分光分析法においては、測定条件や溶液の液性などによる発光強度の変化が分析対象元素と類似していること、及び分析線に対して分光干渉を生じない発光線を選択する」と定めているのは、Thermo の条件と同じことを言っている。
11. 高マトリックス試料をどう捌くか
ここまでの各節が、高マトリックス試料では同時に効いてくる。整理する。
(1) ネブライザ ―― 塩が高いなら V 溝型(30% まで)か、同心型+アルゴン加湿器(3% → 20%)。ただし V 溝型を選んだ時点で液滴が大きくなり、マトリックス効果は増える(2 節)。
(2) プラズマ条件 ―― 高出力・低霧化ガスで Mg 比を上げる。プラズマガスは 12 L/分から増やす。補助ガスでトーチ内管を守る(5 節)。
(3) 観測方向 ―― 高 TDS で軸方向は堆積を起こす。横方向に切り替えると、マトリックス効果も直線範囲も改善する(6 節)。
(4) 希釈 ―― 最も確実で、最も嫌われる手段。ただし 元素分析法の全体像 3 節で見たとおり、希釈は必要な検出下限を直接押し上げる。規制値から逆算した必要検出下限に対して余裕がなければ、希釈は選べない。
(5) マトリックスマッチングと標準添加法 ―― 日本薬局方〈2.63〉が挙げる補正法。標準添加法は非分光干渉の補正に有効だが、「分光干渉がないか、バックグラウンドと分光干渉が正しく補正され、かつ発光強度と濃度の関係が良好な直線性を保つ場合にのみ適用できる」と条件付きである。標準添加法は万能薬ではない。
(6) 前処理に戻る ―― 〈2.63〉が指摘するとおり、有機物の前処理が不十分だと炭素由来の分子バンドスペクトル(CO・CH・CN)が分析線に近接して干渉する。高マトリックスの問題の一部は、実は分解不足の問題である。
12. 装置の現況(2026年)
ICP-OES は成熟した技術だが、分解能と設置面積の競争が続いている。
Analytik Jena PlasmaQuant 9200 シリーズ(2025年6月11日発表)は、現行世代の性格をよく表している。標準版が 200 nm で 6 pm、上位の 9200 Elite が 200 nm で 2 pm の分解能。スペクトル範囲 160〜900 nm、最大 1,700 W のプラズマ電源、起動 10 分未満。そして設置幅 60 cm(前モデル比 40% 以上の縮小)。Dual View Plus 技術とモジュール式の V Shuttle Torch を備える。
160 nm からという短波長端は注目に値する。この領域を測るには分光器内を真空排気するかアルゴン/窒素で置換する必要がある(日本薬局方〈2.63〉は 190 nm 以下でこれを求めている)。
Thermo Fisher iCAP PRO シリーズは、9 節で見たとおり隣接次数まで含めた分離能力を訴求している。
SPECTRO ARCOS はパッシェン・ルンゲ配置に ORCA(Optimized Rowland Circle Alignment)技術を組み合わせ、プラズマを両側から観測する構成を採る。7 節の分類でいえば固定検出器による同時測定型で、全波長カバーは犠牲にする代わりに安定性を取る設計である。
このほか Agilent 5800 / 5900、PerkinElmer Avio シリーズ、島津 ICPE-9800 シリーズが現行機として並ぶ。
注記:本節の情報はメーカーの発表資料と製品ページに基づく。Agilent の公式ページは本記事の執筆時に取得できなかった(HTTP 403)ため、同社機のスペックは検証していない。各社の分解能の数値は測定波長がそろっていない場合があるので、比較する際は必ず「どの波長での値か」を確認すること。
13. 分析者の視点

(1) メソッド開発は「試料導入系 → プラズマ条件 → 波長」の順で決める。逆順にやると、波長を選び直すたびにプラズマ条件の最適化からやり直しになる。
(2) 感度が最大になる霧化ガス流量は、マトリックス効果に最も弱い条件である。感度を少し捨てて流量を下げ、Mg 比を上げたほうが、実試料での回収率は安定する。標準溶液だけを見ているとこの判断はできない。
(3) Mg 比を、自分の装置の基準値として記録しておく。閾値の絶対値を追うより、水系標準での値を記録し、条件を変えたとき・装置が古くなったときの相対的な変化を見るほうが実用的である。トーチやネブライザを交換したあとに Mg 比が落ちていれば、取り付けか部品を疑う。
(4) 検量線の上限側が寝てきたら、自己吸収を疑って横方向観測に切り替える。軸方向は感度と引き換えに直線範囲を失っている。
(5) 「軸方向のほうが 10 倍良い」は、希薄水溶液での話。実マトリックスでは横方向のほうが良いことがある。カタログの検出下限が理想条件の値であることは、装置全般に共通する読み方である(蛍光分光の実務 5 節も同じ構図)。
(6) 干渉は、補正するより避ける。Inorganic Ventures が曲線バックグラウンドについて書いた「よりきれいな分析線を選んで避けよ」は、分光干渉全般に当てはまる原則である。
(7) IEC を使ったら、検出下限を申告し直す。カドミウムの例では約 100 倍悪化した。補正前のカタログ値をメソッドの検出下限として書いてはならない。そして悪化後の検出下限で規制値が測れないなら、正しい対応は ICP-MS への移行である。
(8) 内標準は物理干渉のための道具であって、分光干渉には効かない。回収率が合わないとき、内標準を変えて改善するなら物理干渉、変わらないなら分光干渉か前処理の問題である。この切り分けは診断に使える。
(9) 分解能の数字は、必ず波長とセットで読む。規制対象元素の主要分析線は 180〜220 nm に集中している。500 nm での分解能を誇られても、そこでは意味がない。
(10) 高マトリックスの問題の一部は、分解不足の問題である。炭素由来の分子バンド、ネブライザの詰まり、濁った溶液 ―― これらはすべて前処理に戻ることで解決する。
まとめ
- 同心型ネブライザの霧化効率は約 2%。残りは排液になる。大きな液滴を通さないことで精度を買っている(1・3 節)。
- 詰まりにくいネブライザは液滴が大きく、マトリックス効果を増やしプラズマの頑健さを落とす。分解が甘い試料ほどこの型を選びたくなるという構造的なジレンマがある(2 節)。
- プラズマの頑健さは Mg II 280.270 nm / Mg I 285.213 nm の比で測れる(Mermet 1991)。イオン線 / 原子線の比は、プラズマが試料にどれだけエネルギーを渡せているかの指標である(4 節)。
- 頑健な条件は高出力・低霧化ガス流量。ところが霧化ガスを下げると感度も落ちる。頑健さと感度は同じつまみの両端にある(5 節)。
- 軸方向観測は感度と引き換えに、自己吸収・直線範囲・マトリックス耐性を失っている。「水なら横方向も同等、難しい試料では横方向が良い」(6 節)。
- 溝密度が高いほど分解能は良いがスペクトル範囲は狭くなる。エシェル型は低密度格子で高次数を使い、次数分離の仕組みを要する。分解能の数字は波長とセットで読む(7 節)。
- 分光干渉は4類型:直接重なり(As 228.812 が Cd 228.802 に)・ウイング重なり・バックグラウンドシフト・迷光。直接重なりは見た目が正常に近く、わずかな非対称や「肩」としてしか現れない(8 節)。
- 干渉補正は無料ではない。100 ppm As 中の Cd 測定では、未補正 5100% の誤差が補正後も 51% 残り、検出下限は 0.004 ppm から 0.1〜0.5 ppm へ約 100 倍悪化する(9 節)。
- 内標準は物理干渉には効くが、分光干渉・誤った検量・非線形・検出器飽和には効かない。「よく設計された方法を強化するが、欠陥のある方法を救えない」(10 節)。
ICP-OES は「入れれば出てくる」装置に見える。だが実際には、吸い上げた試料の 98% を捨てた残りを、頑健さと感度のトレードオフの上で測っている。そのトレードオフをどこに置いたかが、実試料での回収率としてあとから現れる。
用語集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 霧化効率(輸送効率) | ネブライザが吸い上げた試料のうち、実際にプラズマへ届く割合。同心型で約 2% |
| ネブライザ | 試料溶液をアルゴン気流で霧に変える部品。同心型/クロスフロー型/V 溝型などがある |
| スプレーチャンバー | 大きな液滴を壁で捕らえて排液し、細かい液滴だけをプラズマへ通す部屋。スコット型とサイクロン型 |
| ロバストネス(頑健さ) | 試料組成が変わっても正確な結果を出せる能力。マトリックス効果の受けにくさ |
| Mg 比(Mg II / Mg I) | Mg II 280.270 nm と Mg I 285.213 nm の強度比。ロバストネスの指標(Mermet 1991) |
| イオン線 / 原子線 | イオン化した原子が出す線/中性原子が出す線。分光学では II / I の記号で区別する |
| 自己吸収 | プラズマ中心部で発光した光が、外周の低温部にある同種の原子に吸収される現象。軸方向観測で起きやすい |
| 軸方向観測/横方向観測 | プラズマを正面から見る/真横から見る。前者は感度、後者は直線範囲とマトリックス耐性に優れる |
| エシェログラム | エシェル型分光器で、波長と次数の二次元に分散したスペクトル像 |
| 元素間補正(IEC) | 干渉元素の濃度を別途測り、その寄与を分析線の信号から差し引く補正 |
| 干渉チェック溶液 | 既知の干渉元素を高濃度で含む溶液。分析種の結果がゼロ近傍になることで干渉のなさを実証する |
| アルゴン加湿器 | ネブライザへ入るアルゴンを加湿し、高塩試料での先端の塩析出を防ぐ装置 |
| メモリー効果 | 前の試料が系内に残り、次の試料の測定値を押し上げる現象。スプレーチャンバーの洗い出し速度に依存 |
出典
- J. M. Mermet「Use of magnesium as a test element for inductively coupled plasma atomic emission spectrometry diagnostics」Analytica Chimica Acta 250, 85 (1991) — Mg II / Mg I ロバストネス指標の出典(HORIBA の解説経由で確認)
- HORIBA「Performances in ICP-OES」 — ロバストネスの定義、Mg 比、高出力・低霧化ガス、プラズマガス 12 L/分、軸方向の自己吸収とマトリックス効果、動的直線範囲と検出器 — https://www.horiba.com/int/scientific/technologies/inductively-coupled-plasma-optical-emission-spectroscopy-icp-oes/performances-in-icp-oes/
- HORIBA「Dispersive system」 — ツェルニー・ターナー/パッシェン・ルンゲ/エシェルの比較、溝密度と分解能 — https://www.horiba.com/int/scientific/technologies/inductively-coupled-plasma-optical-emission-spectroscopy-icp-oes/dispersive-system/
- Glass Expansion「How to Select an Inert Nebulizer for Your ICP」 — 液滴径と輸送効率・マトリックス効果・ロバストネスの関係、DuraMist / OpalMist / VeeSpray の仕様 — https://www.geicp.com/how-to-select-an-inert-nebulizer-for-your-icp
- SPECTRO Analytical Instruments「A Critical Comparison of Nebulizer Types for ICP-OES Analysis」 — ARCOS によるネブライザ比較、塩耐性 — https://www.spectro.com/blog/a-critical-comparison-of-nebulizer-types-for-icp-oes-analysis
- Teledyne Labs「Sample Introduction - Nebulizers」 — 同心型ネブライザの効率約 2%、Hildebrand グリッド型の 30% NaCl — https://info.teledynelabs.com/blog/sample-introduction-nebulizers
- Inorganic Ventures「Spectral Interference: Types, Avoidance and Correction」 — 分光干渉の四類型、バックグラウンド補正の使い分け、As/Cd の IEC 誤差表と検出下限の 100 倍悪化 — https://www.inorganicventures.com/icp-guide/spectral-interference:-types-avoidance-and-correction
- Thermo Fisher Scientific「Resolving Interferences in ICP-OES Using Inter-Element Correction」 — 化学/物理/分光干渉の分類、US EPA 200.7・6010D の干渉チェック溶液、iCAP PRO の Pd 340.458 nm 分離例 — https://www.thermofisher.com/blog/analyteguru/resolving-interferences-in-icp-oes-using-inter-element/
- Thermo Fisher Scientific「Internal Standards in ICP-OES: A Practical Guide to Better Accuracy and Precision」 — 内標準の選択条件、1〜5 ppm、補正できるもの/できないもの、Y 字コネクタ、12 回測定で 0.07% — https://www.thermofisher.com/blog/analyteguru/internal-standards-in-icp-oes-a-practical-guide-to-better-accuracy-and-precision/
- Analytik Jena「New ICP-OES device series PlasmaQuant 9200」(2025年6月11日) — 6 pm / 2 pm @ 200 nm、160〜900 nm、最大 1,700 W、幅 60 cm — https://www.analytik-jena.com/company/news-press/press-releases/new-icp-oes-device-series-plasmaquant-9200-from-analytik-jena/
- 第十九改正日本薬局方 一般試験法 2.63 誘導結合プラズマ発光分光分析法及び誘導結合プラズマ質量分析法(厚生労働省告示第193号、2026年4月10日) — 物理干渉の定義、操作条件の範囲、内標準元素の条件、標準添加法の適用条件、分子バンドスペクトル — https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001689414.pdf
- PerkinElmer「Atomic Spectroscopy — A Guide to Selecting the Appropriate Technique and System」 — 軸方向観測が検出下限を最大 10 倍改善するという記述 — https://www.perkinelmer.com/library/bro-atomic-spectroscopy-a-guide-to-selecting-the-appropriate-technique-and-system.html
- SPECTRO「ICP-OES / AES Spectrometers」(ARCOS のパッシェン・ルンゲ+ORCA、両側観測) — https://www.spectro.com/products/icp-oes-aes-spectrometers
- 島津製作所「ICPE-9800 シリーズ」 — https://www.shimadzu.com/an/products/elemental-analysis/inductively-coupled-plasma-emission-spectroscopy/icpe-9800-series/index.html
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未確認・限界
- Mg II / Mg I 比の閾値を原典で確認できていない。「この値以上なら頑健」という数値は複数流通しているが、Mermet の 1991 年論文(Anal. Chim. Acta 250, 85)本文にあたれていないため、本記事では具体的な閾値を挙げていない。実務で使う際は原典または装置メーカーの推奨値を確認すること。
- Mermet 1991 の書誌は HORIBA の解説ページ経由であり、論文そのものは参照していない。
- エアロゾル輸送効率「約 2%」は Teledyne Labs の同心型ネブライザについての記述である。ネブライザの型・吸引量・スプレーチャンバーの組合せで大きく変わるため、一般値として扱ってはならない。
- SPECTRO のネブライザ比較は同社の ARCOS 上での結果であり、他社機に一般化できるとは限らない。塩耐性の数値(3% / 20% / 30%)も同社の記述による。
- Inorganic Ventures の As/Cd 誤差表は同社の ICP ガイドに掲載された値であり、装置と条件に依存する。検出下限が 100 倍悪化するという数字も、この一例に基づく。IEC の代償の桁感を示すものとして読むべきで、あらゆる元素対に当てはまるものではない。
- Agilent の公式ページは取得できなかった(HTTP 403)。同社の ICP-OES に関する技術資料と 5800 / 5900 のスペックは本記事では検証していない。
- 各社の分解能の数値は測定波長がそろっていない。本記事で数値を挙げたのは Analytik Jena(200 nm での値)のみである。
- エシェル型分光器の実効分解能を数値で確認できていない。HORIBA の解説は格子の溝密度と原理を述べるにとどまる。
- US EPA 200.7 / 6010D の本文は確認していない。干渉チェック溶液の要求については Thermo の記述を経由している。
- 本記事は溶液試料を前提としている。レーザーアブレーションやスラリー導入など、固体試料の直接導入は扱っていない。
制作メモ:本記事はディープリサーチで文献・技術資料を収集したうえで、編集側が HORIBA・Glass Expansion・SPECTRO・Teledyne Labs・Thermo Fisher・Inorganic Ventures・Analytik Jena の各技術ページと、第十九改正日本薬局方の条文 PDF をすべて直接開いて確認し、原典に当たれなかった項目は「未確認・限界」に明示して執筆した。特に Mg II / Mg I 比の閾値は、複数の値が流通しているにもかかわらず原典を確認できなかったため、あえて数値を書かないという判断をしている。収集資料に含まれていた URL を持たない生成文書に由来する記述は、帰属を検証できないため全面的に不採用とした。