試料分解法の選び方 ― 公定法は「これは全分解ではない」と冒頭に書いている【2026年版】
元素・表面分析

試料分解法の選び方 ― 公定法は「これは全分解ではない」と冒頭に書いている【2026年版】

AAS も ICP-OES も ICP-MS も、測る前に試料を溶かさなければならない。その「溶かす」を、どこまでやるか。 EPA Method 3050B は適用範囲の第 2 項でこう宣言している ――「本法は、ほとんどの試料にとって全分解手法ではない」。 ケイ酸塩に結合した元素が溶けないのは失敗ではなく、設計である。実際、同じ堆積物標準物質で Cd・Ni・Pb は 96〜105 % 回収されるのに、Cr だけ 57〜63 % しか出てこない。日本薬局方〈2.66〉も「澄明な溶液が得られない場合は 回収率で保証せよ」とし、その判定幅を 70〜150 % に置いている。本記事は、分解法の選択が「正しい答え」の 定義そのものを変えることを、公定法の原文だけで追う。

元素分析の記事をいくつも書いてきた。AASICP-OESICP-MS。どれも感度や干渉の話をしたが、これらの手法には共通の前提がある ―― 測る前に、試料が溶けていることである。

では、その「溶かす」はどこまでやればよいのか。

答えを探して EPA の公定法を開くと、いきなり出鼻をくじかれる。Method 3050B(酸分解)の適用範囲、第 2 項の冒頭にこうある。

本法は、ほとんどの試料にとって全分解手法ではない。

いきなりである。しかも続きがもっと明快だ。

設計上(by design)、ケイ酸塩構造に結合した元素は、通常この手順では溶解しない。環境中では通常それらが移動しないからである。

溶けないのは、失敗ではない。溶かさないことにしてある。

本記事は、この一文を出発点に、「分解」という操作が何を決めているのかを公定法の原文だけで追う。結論を先に言えば、分解法の選択は「正しい答え」の定義そのものを変える

この記事の読み方

  • 入門者:1〜4 節を読めば「なぜ前処理でこれほど結果が変わるのか」が掴める。
  • 現場の分析者:5〜7 節(HF とその代償)、8〜9 節(密閉容器の実際の制約)が本題。医薬品なら 10 節が直接効く。
  • 数値はすべて公定法・薬局方の原文から引いた。裏が取れなかったものは末尾の「未確認・限界」に明記した。

1. 公定法は「これは全分解ではない」と冒頭に書いている

まず、扱う 3 つの EPA 法を並べておく。いずれも SW-846(廃棄物試験法)に収載されている。

メソッド 表題 加熱方式 目標
3050B(1996年12月 Rev.2) 堆積物・汚泥・土壌の酸分解 開放系・還流 環境利用可能(environmentally available)な元素
3051A(2007年2月 Rev.1) 堆積物・汚泥・土壌・油のマイクロ波支援酸分解 密閉容器・マイクロ波 3050 の代替(迅速化)
3052(1996年12月 Rev.0) ケイ酸質・有機系マトリックスのマイクロ波支援酸分解 密閉容器・マイクロ波 全分解(total decomposition)

3050B の該当箇所を、もう一度きちんと引く。

1.2 本法は、ほとんどの試料にとって全分解手法ではない。これは、「環境利用可能」になりうるほぼすべての元素を溶解する、非常に強い酸分解である。設計上、ケイ酸塩構造に結合した元素は、環境中では通常移動しないため、この手順では通常溶解しない。絶対的な全分解が必要な場合は Method 3052 を使用すること。

読み方を間違えないでほしい。これは「弱い方法です、ごめんなさい」という但し書きではない。「環境中で移動しうる分だけを測る」という目的に対して、正しく設計されているという宣言である。

土壌の鉛を測るとき、砂粒の結晶格子の中に何億年も閉じ込められている鉛は、地下水にも植物にも出てこない。それを数字に入れるかどうかは、分析の問題ではなく、何を知りたいかの問題である。

2. 溶けないのは失敗ではなく、設計である

EPA 3050B は開放系・還流・95 ± 5 ℃ で HF を使わず全分解ではない。EPA 3051A は密閉容器・マイクロ波・175 ± 5 ℃ で HF を使わず土壌では抽出法。EPA 3052 は密閉容器・マイクロ波・180 ± 5 ℃ で HF を使い全分解が目標
図解:3 つの公定法は、それぞれ違う「正しさ」を定義している

前節の一文がなぜ重要かというと、実験室で起きることの意味づけが逆転するからだ。

分解ビーカーの底に白い残渣が残ったとき、多くの分析者は「分解が不完全だった」と考える。もう少し酸を足そう、もう少し加熱しよう、と。

だが 3050B の設計では、その残渣は「溶けるべきでなかったもの」である。ケイ酸塩の骨格は硝酸でも塩酸でも過酸化水素でも壊れない。壊すには HF(フッ化水素酸) が要る(5 節)。3050B は HF を使わない。だから残る。意図どおりである。

3050B の実際の手順を追うと、この「強いが、HF は使わない」という性格がよく見える。

  1. 試料 1〜2 g(湿重量)または 1 g(乾重量)を取る。
  2. 1:1 硝酸 10 mL を加え、時計皿で覆い、95 ± 5 ℃ で 10〜15 分還流(沸騰させない)。
  3. 冷却後、濃硝酸 5 mL を加えて 30 分還流。褐色の煙(試料が硝酸で酸化されている証拠)が出なくなるまで、濃硝酸 5 mL の追加を繰り返す。
  4. 水 2 mL と 30 % 過酸化水素 3 mL を加える。以後 1 mL ずつ追加。ただし過酸化水素は合計 10 mL を超えて加えてはならない。
  5. ICP-AES / フレーム AAS 用なら、ここで塩酸を加えて還流する。
  6. 最終的に 100 mL に定容

注目したいのは 3 の「褐色の煙が出なくなるまで」という終点の決め方である。時間でも温度でもなく、反応の観察で終点を決めている。そして 4 の「過酸化水素は 10 mL まで」という上限。どちらも、この方法が「どこまでやるか」を明示的に区切っていることの現れだ。

加熱源についても、3050B は「90〜95 ℃ を維持できる調節可能な加熱源(ホットプレート、ブロック分解装置、マイクロ波など)」としか指定していない。装置は問わない。温度だけが条件である。

3.「分解」と呼ぶか、「抽出」と呼ぶか

マトリックスが土壌・堆積物なら抽出法とみなすべきで、そうでなければ分解となる場合がある。Method 3050 と同等の結果が必要な元素(Al, Sb, Ba, Be, Cr, Ag, V)には塩酸の添加が通常必要で、不要なら硝酸のみ
図解:表題が digestion でも、マトリックスによって公定法自身が呼び名を訂正している

3050B のマイクロ波版が Method 3051A である。ところがこちらの適用範囲は、さらに踏み込んだ書き方をしている。

本法は試料の全分解を達成することを意図していないため、抽出された分析種の濃度は、試料中の全含量を反映しない場合がある。

そして元素リストの下に、こんな脚注が付く。

‡注:ある種の油のようなマトリックスでは、本法は全試料溶解を与えることもあれば、与えないこともある。土壌や堆積物のような他のマトリックスでは、本法は抽出法(extraction method)とみなすべきである。

公定法が、自分の呼び名を訂正している。 表題には「digestion(分解)」とあるが、土壌に適用するときは extraction(抽出)と考えろ、と。

同じ脚注のすぐ上、元素リストにはもうひとつ重要な印がある。

*は、Method 3050 と同等の結果を得るために塩酸の添加を通常必要とする元素を示す。

印が付いているのは Al・Sb・Ba・Be・Cr・Ag・V など。つまり、硝酸だけでは 3050B と同じ数字にならない元素があるということだ。同じ「3051A」という名前の方法の中に、酸の組み合わせで結果が変わる元素群が明示されている。

4. 同じ標準物質で、元素によって回収率が分かれる

SRM 2704 の分解値と全元素濃度の比較。Cd は 3.40 と 3.62 に対し全量 3.45、Cr は 84.7 と 77.1 に対し全量 135、Ni は 45.5 と 42.2 に対し全量 44.1、Pb は 163 と 161 に対し全量 161
図解:Cd・Ni・Pb は 96〜105 % 回収されるのに、Cr だけ 57〜63 %

ここまでは方法の記述である。では実際にどれくらい差が出るのか。3051A は自分でそのデータを載せている。

Method 3051A の Table 1 は、NIST の認証標準物質 SRM 2704(Buffalo River Sediment、バッファロー川の堆積物)を 2 通りの酸で分解し、認証された全元素濃度と比べたものである。

元素 10 mL HNO3 分解 9 mL HNO3 + 3 mL HCl 分解 全元素濃度
Cd 3.40 ± 0.34 3.62 ± 0.17 3.45 ± 0.22
Cr 84.7 ± 5.6 77.1 ± 12.6 135 ± 5
Ni 45.5 ± 5.9 42.2 ± 3.2 44.1 ± 3.0
Pb 163 ± 9 161 ± 17 161 ± 17

(単位 µg/g、平均 ± 95 % 信頼限界。分析は FAAS または ICP-MS)

全元素濃度に対する比を計算すると、こうなる(筆者計算)。

元素 硝酸のみ 硝酸+塩酸
Cd 98.6 % 104.9 %
Cr 62.7 % 57.1 %
Ni 103.2 % 95.7 %
Pb 101.2 % 100.0 %

Cd・Ni・Pb はどちらの酸でも 96〜105 %。ところが Cr だけ 57〜63 % しか出てこない。

しかも興味深いことに、塩酸を足したほうが Cr は下がっている(62.7 % → 57.1 %)。そして Cr の 95 % 信頼限界は 12.6 と、他の元素より明らかに大きい。

これが 1 節の「設計」の意味である。堆積物中のクロムの 4 割前後は、ケイ酸塩の格子の中にいる。硝酸でも王水でも、そこには手が届かない。届かないことが分かっていて、この方法は作られている。

だから、この表を「3051A は Cr の回収率が悪い」と読むのは半分しか正しくない。正しくはこうだ ――

「堆積物中の全クロム」と「堆積物から環境中に出てきうるクロム」は、別の量である。3051A は後者を測っている。

そして、どちらの数字を報告書に書くべきかは、分析法ではなく、その分析が何のためにあるかで決まる。

5. 全分解に行くと、別の排他が始まる

EPA 3052 は全分解を要求するため HF を使い、ケイ酸質マトリックスや灰・油汚染土壌の完全分解に適用できる。一方で溶出規制(leachate)に基づく評価には使えない
図解:全部溶かすと、今度は溶出規制の問いに答えられなくなる

では全部溶かせばよいのか。3050B が名指しで案内している Method 3052 を開く。

1.1 本法は、ケイ酸質マトリックス、有機マトリックス、およびその他の複雑なマトリックスのマイクロ波支援酸分解に適用できる。(対象分析種に対して)全分解分析が必要な場合、灰・生体組織・油・油汚染土壌・堆積物・汚泥・土壌を分解できる。

1.3 本法の目標は全試料分解であり、酸の組み合わせを慎重に選べば、大半のマトリックスでこれは達成可能である。

ところが同じ節に、逆向きの排他がある。

注:本手法は、溶出液(leachate)調製の使用を要求する規制用途には適さない(Method 3050、Method 3051、Method 1311、Method 1312、Method 1310、Method 1320、Method 1330、Method 3031、Method 3040)。本法は、研究目的で全分解を要求する用途(地質学的研究、マスバランス、標準物質の分析)、または全分解を要求する規制への対応に適する。

3052 は 3050 の上位互換ではない。 溶出試験を要求する規制のもとでは、3052 を使ってはいけない。全部溶かしてしまったら、「溶け出す量」を問うている規制の質問に答えていないからだ。

3050B が「全分解が必要なら 3052 へ」と言い、3052 が「溶出が必要なら 3050 へ戻れ」と言う。2 つの方法は上下ではなく、並列に置かれている。

なお 3052 の手順は次のとおりである。

  • 試料 0.5 g まで(最大 1.0 g までスケールアップ可)
  • 濃硝酸 9 mL と、通常は HF 3 mL、マイクロ波加熱 15 分
  • 温度プロファイル:5.5 分未満で 180 ± 5 ℃ に到達し、180 ± 5 ℃ を 9.5 分保持
  • 冷却後、ろ過・遠心・静置デカントのいずれかを行い、定容して分析

3050B の 95 ℃ に対して 180 ℃。開放系で沸点に縛られていた温度が、密閉すると 85 ℃ 上がる。ここが密閉容器の本質である(8 節)。

6. HF の量は、試料の SiO2 含量が決める

HF の量は SiO2 含量で決まる。SiO2 が 10 % 未満から 0 % なら HF は 0.5 から 0 mL、SiO2 が 70 % を超えるなら HF は 3 mL 超。範囲は 0 から 5 mL。反応式は SiO2 + 6HF → H2SiF6 + 2H2O
図解:HF の量を決めるのは、測りたい元素ではなく邪魔をしているケイ素の量

3052 と 3050B/3051A を分けている唯一にして決定的な違いが HF(フッ化水素酸)である。ケイ酸塩の Si–O 骨格を壊せるのは、実質的に HF だけだからだ。

面白いのは、3052 が HF の量を固定していないことである。

ドラフト内で容器に酸を加える。試料のおおよその二酸化ケイ素含量が分かっている場合、化学量論的な理由から、HF の量は 0 〜 5 mL の範囲で変えてよい。二酸化ケイ素の濃度が高い試料(> 70 %)は、より高濃度の HF(> 3 mL)を要することがある。逆に二酸化ケイ素の濃度が低い試料(< 10 % 〜 0 %)は、はるかに少ない HF(0.5 mL 〜 0 mL)でよいことがある。

HF の量は、分解したい元素の量ではなく、邪魔をしているケイ素の量で決まる。「化学量論的な理由から」と明記されているとおり、これは反応式の話である。SiO2 + 6HF → H2SiF6 + 2H2O ―― ケイ素 1 に対して HF が 6 いる。

そして注目すべきは、HF を 0 mL にする選択肢が method の中に用意されていることだ。二酸化ケイ素をほとんど含まない試料(たとえば医薬品や生体組織)に 3052 を適用するなら、HF は要らない。「3052 を使う=HF を使う」ではない。

7. ホウ酸を入れると、ホウ素が測れなくなる

HF を使い ICP の石英トーチを保護するためホウ酸を加えると、ホウ素が測定できなくなる。HF 耐性トーチを使えばホウ酸は不要。塩酸が容器に残っていると銀が AgCl として沈殿し、GFAA と ICP-MS では干渉の問題も生じる
図解:分解のために加えた試薬が、測りたい元素をひとつ潰す

HF を使ったら、次の問題が来る。HF は石英を溶かす。 ICP のトーチもネブライザーも石英でできている。

3052 の対処法の記述が、この記事でいちばん実務的かもしれない。

HF 濃度が分析技術(ICP 法など)において考慮事項となる場合、フッ化物を錯形成させて石英プラズマトーチを保護するために、ホウ酸を加えてよい。加える酸の量は、装置と分析手順によって変えてよい。このオプションを使う場合、ホウ酸の分と、それがもたらしうるバイアスを調整するために、測定手順の変更が必要である。この添加により、試料の元素構成成分のひとつとしてのホウ素の測定はできなくなる。

あるいは、HF 耐性の ICP トーチを使えば、この分析構成ではホウ酸の添加は不要になる。

分解のために加えた試薬が、測りたい元素をひとつ潰す。

ホウ素を測る必要がないなら、これは払ってよい代償である。だがホウ素も分析対象に入っているなら、ホウ酸は使えない ―― HF 耐性トーチを買うか、別の分解法にするかの分岐になる。

3052 にはもうひとつ、似た形の注意がある。

銀の沈殿を防ぐため、容器から塩酸がすべて洗い流されていることを確認する。

塩酸が残っていると Ag は AgCl として沈む。前の分析で使った酸が、次の分析の元素をひとつ消す。

さらに、酸の選択は測定側にも影響する。

塩酸の存在は、黒鉛炉原子吸光(GFAA)および ICP-MS にとって問題となりうる。

塩素は ICP-MS で 40Ar35Cl+ などの多原子イオンを作る。だから 3050B は「GFAA / ICP-MS 用」と「ICP-AES / フレーム AAS 用」で手順を分けており、塩酸を加えるのは後者だけである。

どの酸を使うかは、何を溶かしたいかだけでなく、何で測るかでも決まる。 ICP-MS の記事で扱った干渉の話は、実は分解の段階から始まっている。

8. 密閉容器が買っているもの、払っているもの

容器の耐圧限界は 30 atm(435 psi)。試料を入れず硝酸 9 mL と塩酸 3 mL だけを加熱しても約 12 atm に達し、残りのマージンは 18 atm。炭酸塩または炭素系試料は 0.25 g を超えるとベントの危険がある
図解:酸だけで耐圧の 4 割を使う ― 有機マトリックスでは 0.25 g が壁になる

開放系の 95 ℃ に対して、密閉容器は 175 ℃(3051A)や 180 ℃(3052)で反応させる。沸点の縛りを外して、80〜85 ℃ 上乗せするのが密閉容器の存在意義である。反応速度は温度で急激に上がるから、時間は 10〜15 分に縮む。

もうひとつの利点は、日本薬局方が端的に書いている。

密閉容器内分解は揮発性不純物の損失を最小限にできる。

開放系で 95 ℃ に加熱し続ければ、水銀・ヒ素・セレンといった揮発しやすい元素は逃げる余地がある。密閉していれば逃げ場がない。

では代償は何か。圧力である。3051A の要求仕様は具体的だ。

容器は少なくとも 30 atm(435 psi)の圧力に耐え、かつ制御された圧力放出ができなければならない。

そして、次の警告が続く。

警告:この試薬の組み合わせ(硝酸 9 mL に対し塩酸 3 mL)は、硝酸のみを使う場合よりも高い圧力になる。図 1 と図 2 に示すとおり、酸混合物だけを加熱した場合(容器に試料なし)でも、約 12 atm の圧力に達している。実際の分解時に到達する圧力は(これを上回る)。

試料をひとつも入れずに、酸だけで 12 atm。容器の設計耐圧 30 atm に対して、始める前から 4 割を使っている。

残りの 18 atm が試料の取り分だが、これも簡単に使い切る。

非常に反応性の高い試料や揮発性物質は、気体状の分解生成物の発生により高い圧力を生じうる。これにより容器がベント(放圧)し、試料や分析種が失われる可能性がある炭酸塩または炭素系試料の完全な分解は、試料量が 0.25 g を超えると、容器をベントさせるのに十分な圧力を生じうる(容器の耐圧能力による)。

有機物なら 0.25 g が壁になる。 炭素が CO2 に、窒素が NOx になって、そのまま気体として容器内に溜まるからだ。

ここに、密閉容器分解のいちばん厄介なトレードオフがある。

  • 試料量を増やしたい ―― 検出下限を下げるには、濃縮率を上げたい(元素分析の全体像で扱った「規制値から逆算した目標濃度」の話)。
  • 試料量を減らしたい ―― 圧力でベントすれば、そこまでの努力が全部無駄になる。

そして有機マトリックスほど、この壁は低い。医薬品は、まさに有機マトリックスである。

9. 温度制御は「±2.5 ℃ を 2 秒以内」まで規定されている

温度は ±2.5 ℃ 以内で検知し 2 秒以内に出力を自動調整する。温度センサーの確度は ±2 ℃。分解自体は 15 分だが、高濃度から低濃度への切替時の洗浄は熱い塩酸 2 時間と熱い硝酸 2 時間で計 4 時間かかる
図解:分解は 15 分。容器の洗浄は 4 時間

密閉容器を安全に、かつ再現性よく使うために、EPA 法は装置側の性能まで踏み込んで規定している。3052 の記述はこうだ。

温度性能要件は、マイクロ波分解システムが温度を ±2.5 ℃ 以内で検知し、検知から 2 秒以内にマイクロ波出力を自動調整することを必要とする。温度センサーは(最終反応温度 180 ℃ を含めて)±2 ℃ の確度を持つべきである。

3051A も同じ水準(最終反応温度 175 ± 5 ℃)を要求し、こう付け加える。

温度フィードバック制御が、本法の主要な性能機構である。試料マトリックスの種類とマイクロ波分解装置(容器の型式やマイクロ波オーブンの設計の違い)に変動があるため、再現性のあるマイクロ波加熱には温度フィードバック制御が好ましい。

つまり EPA が規定しているのは「何ワットで何分」ではなく「何度をどう保つか」である。装置のワット数もメーカーも問わない。温度プロファイルが再現できるかどうかだけを見る。

温度センサー自体の校正法まで書いてある。

温度測定システムの確度は、高温で定期的に検証すべきである。シリコーンオイル(高温用オイル)をビーカーに注ぎ、均一な温度になるよう十分に撹拌する。マイクロ波の温度センサーと、校正済みの外部温度測定センサーの両方をビーカーに入れ、加熱する。

装置の温度計を、別の温度計で確かめる。XRD の記事で NIST 標準物質の話をし、XPS の記事で ISO 15472 のエネルギー軸校正の話をしたが、分解装置にも同じ構造がある ―― 装置が表示している数字を、独立した手段で確かめる。

もうひとつ、地味だが効く規定が容器の洗浄である。

高濃度試料と低濃度試料を切り替えるときは、すべての分解容器(フッ素樹脂または石英ライナー)を、熱い(1:1)塩酸(80 ℃ 超、沸騰未満)で最低 2 時間、続いて熱い(1:1)硝酸で最低 2 時間リーチングして洗浄すべきである。(中略)容器の以前の用途が不明な場合、または容器からの相互汚染が疑われる場合にも、この洗浄手順を用いるべきである。

分解 1 回が 15 分なのに、容器の洗浄には 4 時間かかる。 微量分析における前処理の実際の時間配分が、ここに出ている。

10. 医薬品では、担保のしかたが違う

日本薬局方〈2.66〉の添加回収率の適合基準は 70 〜 150 %。スパイクは試料調製前に添加する。併行精度は RSD 20 % 以下、室内再現精度は RSD 25 % 以下。澄明な溶液が得られない場合は回収率で保証すべきとされる
図解:薬局方も「溶けきらないこと」を前提に、回収率で担保する設計になっている

ここまで環境試料の話をしてきた。医薬品はどうか。

日本薬局方〈2.66〉元素不純物(ICH Q3D の和訳にあたる)は、試料調製を 4 種類に分けている。

調製の種類 適用
未処理試料 液体試料、または溶媒に溶解することなく測定可能な場合
水溶液 試料が水性溶媒に可溶な場合
有機溶媒溶液 試料が有機溶媒に可溶な場合
分解処理溶液 通例、被験試料が水にも有機溶媒にも溶解しない場合

つまり 薬局方では、分解は最後の手段である。溶けるなら溶かすだけでよい。有機溶媒に溶けるならそれでよい。どちらも駄目なときにだけ分解する。

そして分解の規定はこうだ。

分解処理溶液は被験試料を全て分解できるものが望ましい。被験試料の分解には、以下に示す密閉容器内分解法又はそれに類似した方法を用いる。(中略)試料マトリックスを構成する物質により、選択すべき濃い酸は異なる。どのような濃い酸を使用してもよいが、それぞれの濃い酸には固有の安全性のリスクがある。

酸の種類は指定されていない。「どのような濃い酸を使用してもよい」。EPA が硝酸・塩酸・HF・過酸化水素の量まで書くのとは対照的である。

示されているのは「広く適用可能な一例」だけだ。

被験試料 0.5 g5 mL の新たに調製した濃い酸で脱水及び前分解する。ドラフトチャンバー内で緩く覆った状態で 30 分間静置する。10 mL の濃い酸を追加し、密閉容器内分解手法を用いて、澄明な溶液が得られるまで分解又は抽出を行う。必要な場合は、濃い酸 5 mL を繰り返し追加する。

ここでも「分解又は抽出」と両方が併記されている。EPA 3051A の脚注と同じ構えである。

そして、本記事の核心に対応する一文が続く。

分析手順のバリデーションを行う際には、澄明な溶液が調製されることが望ましい。澄明な溶液が得られない場合は、適切なバリデーションにより試験方法の使用目的に適した回収率が得られることを保証すべきである。

薬局方も「溶けきらないこと」を前提に設計されている。そのときは、完全性ではなく回収率で担保せよ、と言う。

では、その回収率の判定幅はいくつか。〈2.66〉の真度の項にこうある。

試料:試料調製(分解又は溶解)前に、適切な各分析対象元素の標準物質を目標濃度の 50 〜 150 % の範囲内にある 3 濃度となるように添加した被験試料を、各試料につき三つ調製する。

適合基準 ― 添加回収率:各濃度につき、3 回繰り返し調製した試料から得られた添加回収率の平均が 70 〜 150 %

70 〜 150 %。 これが薬局方の引いた線である。

2 つ、押さえておきたい点がある。

ひとつ目。スパイクは「試料調製前」に添加しなければならない。 つまり分解の工程そのものを通したうえでの回収率を見る設計になっている。分解で失われる分も、逆に汚染で増える分も、この数字に含まれる。

ふたつ目。70 〜 150 % は、かなり広い。 3 割失っても、5 割多く出ても合格である。これを甘いと見るか妥当と見るかは立場によるが、少なくとも「完全分解を前提にしていない」ことの表明ではある。

参考までに、精度側の基準も並べておく。

項目 適合基準
併行精度(同一ロットから 6 試料、または 3 濃度 × 3 回) 相対標準偏差 20 % 以下
室内再現精度(日・装置・分析者のいずれかを変えて再実施) 相対標準偏差 25 % 以下

4 節で見た SRM 2704 の Cr は、全元素濃度に対して 57 〜 63 % だった。もし同じ数字が医薬品の添加回収率として出たなら、薬局方の 70 % を下回って不適合になる。(環境試料と医薬品では対象も目的も違うので直接の比較はできないが、判定幅の感覚を掴む材料にはなる。)

11. 分解しないという選択

試料分解は分析の準備工程ではなく、何を測っているかを決める分析の一部である。分解の完全性を確かめないことの正体は、溶けたものが全部だと仮定していることである
図解:分解法の選択が、報告書に書く「正しい答え」の定義そのものを変える

最後に、この記事の枠組みそのものを外から見ておきたい。そもそも溶かさない、という選択肢がある。

XRF の記事で扱ったとおり、蛍光X線分析は固体をそのまま測る。酸も要らず、分解による損失も汚染もない。代わりに「試料が均質である」という仮定を引き受ける。XRDXPS も固体をそのまま測る手法である。

つまり、選択肢は次のように整理できる。

方針 引き受けるもの 代表例
溶かさない 試料が均質であるという仮定。表面と内部の違い。 XRF、XRD、XPS
部分的に溶かす 「何が溶けたか」の定義。ケイ酸塩は残る。 EPA 3050B / 3051A
全部溶かす HF の取り扱い、ホウ酸によるホウ素の犠牲、装置の腐食 EPA 3052
溶かさずに済ませる 溶けるものだけを対象にする 薬局方の「水溶液」「有機溶媒溶液」

どれが優れているかではなく、どれが問いに合っているかである。1 節で見た「環境利用可能な元素」という概念は、まさに問いのほうを先に決めた例だった。

そして XRF の記事で書いた「前処理が要らないの正体は、試料が均質だという前提を仮定していること」は、ここでも形を変えて成り立つ。

分解の完全性を確かめないことの正体は、「溶けたものが全部だ」と仮定していることである。

分析者の視点

  1. 報告書に「全含量」と書く前に、使った方法が全分解かを確認する。 EPA 3050B と 3051A は、自ら全分解ではないと宣言している(1・3 節)。
  2. 残渣が残ったとき、まず「残るべき残渣か」を考える。 ケイ酸塩は HF なしでは溶けない。それは失敗ではない(2・6 節)。
  3. 元素ごとに回収率が違うことを前提にする。 同じ試料・同じ分解で、Cd/Ni/Pb が 96〜105 %、Cr が 57〜63 % という実測がある(4 節)。
  4. 「全部溶かせば安全」ではない。 溶出試験を要求する規制のもとでは、全分解法は使えない(5 節)。
  5. HF を使うなら、ホウ素を捨てるか HF 耐性トーチを買うかを先に決める。 ホウ酸添加はホウ素の測定を不可能にする(7 節)。
  6. 有機マトリックスでは 0.25 g が目安。 炭酸塩・炭素系試料は、それを超えると容器がベントしうる(8 節)。
  7. 装置は「ワット数」ではなく「温度プロファイルが再現できるか」で選ぶ。 EPA が規定しているのは温度である(9 節)。
  8. スパイクは分解の前に入れる。 薬局方はそう明記している。分解後に入れたスパイクは、分解による損失を評価できない(10 節)。
  9. 容器の洗浄時間を工程に織り込む。 分解 15 分に対し、高濃度→低濃度の切替時の洗浄は 4 時間である(9 節)。

まとめ

試料分解は、分析の準備ではない。分析の一部であり、しかも「何を測っているか」を決めている工程である。

  • EPA 3050B は「これは全分解ではない」と冒頭に書き、ケイ酸塩を設計上溶かさない。
  • EPA 3051A は、土壌では「抽出法とみなすべき」と自ら訂正する。
  • 実測では、同じ堆積物標準物質で Cd・Ni・Pb が 96〜105 %、Cr が 57〜63 %
  • EPA 3052 は全分解を目指すが、溶出規制のもとでは使えない
  • 日本薬局方〈2.66〉は「澄明な溶液が望ましい」としつつ、得られない場合は回収率 70〜150 % で担保せよと言う。

4 つの権威が、いずれも「完全には溶けない」ことを前提に設計されている。 完全分解を求めているのは、多くの場合、公定法ではなく分析者の側である。

XRF は元素ごとに違う深さを見ていた。XRD は相ごとに違う定量限界を持っていた。XPS はエネルギー軸のゼロ点が動いていた。そして分解は、そもそも「全量」が何を指すかを動かす。

いずれの場合も、やることは同じである。自分が何を測っているのかを言葉にして、報告書に書く。「全クロム 84.7 µg/g」ではなく「EPA 3051A(硝酸のみ)によるクロム 84.7 µg/g」と書く ―― それだけで、その数字は再現可能なものになる。

用語集

  • 分解(digestion):試料を酸などで処理し、目的元素を溶液化する操作。全分解と部分分解がある。
  • 全分解(total decomposition / total digestion):試料マトリックスを完全に破壊し、含まれる元素をすべて溶液に移す分解。ケイ酸塩を含む試料では通常 HF が必要。
  • 抽出(extraction):試料の一部の相・形態から目的元素を取り出す操作。溶け残りが前提となる。
  • 環境利用可能(environmentally available):EPA 3050B の概念。環境中で移動しうる形態にある元素を指す。ケイ酸塩格子に閉じ込められた元素は含まれない。
  • 溶出液(leachate):規定の条件で試料から溶け出させた液。EPA 1311(TCLP)などの試験で用いる。全分解とは目的が逆。
  • 密閉容器内分解:圧力容器の中で加熱する分解。沸点の制約を外して高温にでき、揮発性元素の損失を抑えられる。日本薬局方〈2.66〉が推奨する方式。
  • HF(フッ化水素酸):ケイ酸塩の Si–O 骨格を分解できる実質的に唯一の酸。石英を溶かすため、ICP のトーチ保護にホウ酸添加または HF 耐性トーチが必要。
  • ホウ酸によるフッ化物の錯形成:過剰な HF を H3BO3 で錯体にし、石英部品を守る操作。副作用としてホウ素が測定できなくなる。
  • 添加回収率(spike recovery):既知量の標準を試料に加え、どれだけ回収されるかを見る指標。日本薬局方〈2.66〉の適合基準は 70 〜 150 %。
  • J 値:日本薬局方〈2.66〉で用いる、試料溶液中の分析対象元素の目標濃度。標準溶液は 0.5 J と 1.5 J で調製する。
  • SRM 2704:NIST の認証標準物質。Buffalo River Sediment(バッファロー川堆積物)。EPA 3051A の性能データに用いられている。

出典

  1. EPA SW-846 Method 3050B, "Acid Digestion of Sediments, Sludges, and Soils"(Revision 2, December 1996)― §1.2「本法はほとんどの試料にとって全分解手法ではない」「設計上、ケイ酸塩構造に結合した元素は通常溶解しない」、試料量 1〜2 g、95 ± 5 ℃ の還流、褐色の煙が出なくなるまでの硝酸追加、過酸化水素の上限 10 mL、GFAA/ICP-MS 用と ICP-AES/FLAA 用の手順の分岐、最終 100 mL、加熱源は 90〜95 ℃ を保てるもの、試薬純度はメソッドブランクが MDL 未満であること https://www.epa.gov/sites/default/files/2015-06/documents/epa-3050b.pdf
  2. EPA SW-846 Method 3051A, "Microwave Assisted Acid Digestion of Sediments, Sludges, Soils, and Oils"(Revision 1, February 2007)― §1.1「全分解を意図していないため、抽出された分析種の濃度は全含量を反映しない場合がある」、脚注「土壌や堆積物では抽出法とみなすべき」、塩酸添加を要する元素の印、Table 1(SRM 2704 の Cd/Cr/Ni/Pb の回収比較)、容器は最低 30 atm(435 psi)、酸のみで約 12 atm、炭素系試料は 0.25 g 超でベントしうる、175 ± 5 ℃ に 5.5 ± 0.25 分で到達し 4.5 分保持、温度は ±2.5 ℃ 検知・2 秒以内に出力調整、容器洗浄は熱い塩酸 2 時間+熱い硝酸 2 時間 https://www.epa.gov/sites/default/files/2015-12/documents/3051a.pdf
  3. EPA SW-846 Method 3052, "Microwave Assisted Acid Digestion of Siliceous and Organically Based Matrices"(Revision 0, December 1996)― §1.1 適用範囲と「溶出液調製を要求する規制用途には適さない」、§1.3「本法の目標は全試料分解」、試料 0.5 g・濃硝酸 9 mL・HF 通常 3 mL・15 分、180 ± 5 ℃ に 5.5 分未満で到達し 9.5 分保持、SiO2 含量に応じた HF 量の調整(> 70 % なら > 3 mL、< 10〜0 % なら 0.5〜0 mL、化学量論的理由)ホウ酸添加によるフッ化物錯形成とホウ素測定の不能化、HF 耐性トーチという代替、塩酸の残留による銀の沈殿、塩酸が GFAA / ICP-MS で問題になりうること、温度センサーの校正(シリコーンオイル) https://www.epa.gov/sites/default/files/2015-12/documents/3052.pdf
  4. 第十九改正日本薬局方 一般試験法〈2.66〉元素不純物(厚生労働省、2026年4月10日告示・同日適用)― 試料調製の 4 種類(未処理試料・水溶液・有機溶媒溶液・分解処理溶液)、密閉容器内分解は揮発性不純物の損失を最小限にできる、「どのような濃い酸を使用してもよい」、広く適用可能な一例(0.5 g・濃い酸 5 mL・30 分静置・10 mL 追加・澄明な溶液が得られるまで分解又は抽出)、「澄明な溶液が得られない場合は、適切なバリデーションにより使用目的に適した回収率が得られることを保証すべきである」添加回収率の適合基準 70 〜 150 %、スパイクは試料調製前に添加、併行精度 RSD 20 % 以下・室内再現精度 RSD 25 % 以下 https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001689414.pdf

関連記事

未確認・限界

  1. 本記事は EPA SW-846 の 3 法と日本薬局方〈2.66〉の原文のみを一次資料としている。ディープリサーチで収集した他の数値 ―― 残留炭素量とその ICP 信号への影響、開放系分解での揮発性元素の損失率、4 酸分解と融解法の回収率比較、EPA 3050B のケイ酸塩結合元素の回収率、ホウ酸添加後の再加熱による回収率改善など ―― は、いずれも出典が URL を持たない合成ドキュメントに帰着したため、すべて不採用とした。魅力的な数値だったが、一次資料にたどり着けていない。
  2. マイクロ波分解装置のメーカー別スペック比較表は作らなかった。Milestone は SSL 証明書の問題、Anton Paar は 403、CEM は 404 で、いずれも公式仕様を確認できなかった。本記事で挙げた温度・圧力の数値は、すべて EPA 法が規定する要求水準であり、特定製品の性能値ではない。
  3. USP〈233〉の原文は確認していない。10 節で挙げた回収率 70 〜 150 % は、日本薬局方〈2.66〉の原文で確認した値である。USP〈233〉にも対応する規定があるとされるが、本記事はその条文を参照していない。
  4. 4 節の回収率(%)は、EPA 3051A の Table 1 に記載された測定値と全元素濃度から筆者が計算したものである。表そのものに % は記載されていない。また、この表の測定は FAAS または ICP-MS で行われたとあるが、どの元素をどちらで測ったかは明示されていない。
  5. 10 節末尾の「SRM 2704 の Cr が薬局方の基準なら不適合になる」という記述は、判定幅の感覚を示すための対比である。環境試料の全元素濃度に対する回収率と、医薬品の添加回収率は、測っている対象も目的も異なる。直接比較できるものではない。
  6. EPA SW-846 の各法は改訂される。本記事が参照したのは 3050B が Revision 2(1996年12月)、3051A が Revision 1(2007年2月)、3052 が Revision 0(1996年12月)である。最新の改訂状況は EPA のサイトで確認されたい。
  7. アルカリ融解(ホウ酸リチウム融解など)、マイクロ波誘起燃焼、酸素フラスコ燃焼、スラリー導入、レーザーアブレーションについては本記事では扱っていない。11 節で「溶かさない選択」に触れたが、これらの各論は別記事に譲る。
  8. HF の安全な取り扱い(曝露時の応急処置、グルコン酸カルシウムの常備など)については本記事は扱っていない。HF は皮膚から浸透して深部組織と骨に到達する特有の危険性を持つ。実際に使用する前に、必ず所属機関の安全管理規程と SDS を確認されたい。
  9. 残留炭素を分解完全性の指標として使う手法については、一次資料を確認できなかったため扱っていない。有機マトリックスの分解では実務上重要な論点だが、数値を伴う記述は本記事には含まれていない。

制作メモ:ディープリサーチで一次情報の候補を収集し、編集側で EPA SW-846 の公定法原文および薬局方原文にあたって検証のうえ執筆した。本文中の回収率(%)は、出典の表に記載された測定値から筆者が計算したもので、その旨を明記している。ディープリサーチの生成物のうち、出典が合成ドキュメントに帰着する数値は、魅力的なものも含めてすべて不採用とした。